遺言は、遺言者が亡くなってから効力を生ずるものであり、遺言者の意思を確保する必要があります。また、後の偽造、変造を防ぐ必要があります。そのため、遺言は、書面によってすることが必要であり、その方式も厳格に定められています。
普通の方式の遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つがあります。
自筆証書遺言
遺言者がその全文、日付及び氏名を自書(自身が手書きする)(財産目録は自書でなくてもよい)し押印して作成される遺言
公正証書遺言
一定の方式に従い公正証書によって作成される遺言
秘密証書遺言
遺言者が署名押印した証書を封印し公証人及び証人に提出して、遺言の存在は明らかにしながらその内容を秘密にして保管することのできる方式の遺言

 自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言
利点最も簡単に作成できる(公証人、証人は不要)。
費用がかからない。
遺言の存在自体を秘密にすることができる。
公証人が関わるため、文意が不明確、方式に従っていないなどの理由で無効になるおそれが低い。
滅失・毀損・偽造・変造のおそれがない(原本は公証役場で保管される)。
公証人、証人にも内容が知られない。
公証人の手数料の費用はかかるが公正証書遺言と比べて費用は低額である。
欠点滅失・毀損・偽造・変造のおそれがある。
簡単に作成できる分、公正証書遺言と比べて、文意が不明確、方式に従っていないなどの理由で無効になるおそれが大きい。
公証人の手数料等の費用がかかる。
公証人、証人には内容が知られてしまう。
滅失・毀損のおそれがある。
自筆証書遺言ほどではないが方式に従っていないなどの理由で無効になるおそれがある。

公正証書遺言の場合、公証人や証人に知られてしまうとはいえ、公証人にも証人にも秘密保持義務があるため、、遺言の内容が漏れることは通常考えられません。費用がかかる とはいえ、相続財産の額によりますが、数万円から十数万円程度です。紛争になるおそれ、紛争になっても効力が覆されるおそれが少ないことを考えれば、公正証書遺言が最も望ましいと考えます。
自筆証書遺言について、2019年1月13日より、財産目録は自書しなくてよいことになり、作成の手間が少々掛からなくなりました。また、自筆証書遺言書保管制度の運用が2020年7月20日に開始され、この制度を利用すれば、自筆証書遺言の紛失・改竄などのおそれが解消されます。
このように、自筆証書遺言の欠点は従前に比べていくらか避けられるようになりました。
それでもなお、遺言は、遺言をした人がお亡くなりになってから登場するものであることを考えるならば、文章を明確にしておくべきこと、方式違背を避けるべきこと(訂正の仕方を間違えても方式違背になります)が重要ですから、公正証書にしておくべきだと考えます。